「双頭の悪魔」有栖川有栖を読んでの感想（書評005）

不思議管理人

今回は有栖川先生の学生アリスシリーズ第3弾！「双頭の悪魔」についての感想を綴っていきます。前作の「孤島パズル」に登場したマリアが再び登場。ま、まさか、アリスと彼女が恋仲に発展するような展開はあるのか！？事件はもちろんですが、そのあたりも展開も目が離せません。

本作との出会い

これまで「孤島パズル」や「月光ゲーム」を読破してきた私にとって、残りの学生アリスシリーズを読み進めることは自然なことです。登場人物の人となりもわかっているので、シリーズ物ならではの安心感を持って読み進めることができました。

内容紹介（あらすじ）

他人を寄せ付けず奥深い山で芸術家たちが捜索に没頭する木更村に迷い込んだまま、マリアが戻ってこない。救助に向かった英都大学推理研の一行は～中略～。川の両側に分断された木更村の江神・マリアと夏森村のアリスたち、双方が殺人事件に巻き込れ、～中略～

例によって裏表紙から一部抜粋させて頂きました。他人を寄せ付けない奥深い山・・・はい、今回もクローズドサークルでございます。また「月光ゲーム」で登場した推理研の一行と、「孤島パズル」で登場したマリア、前回からの登場人物が総結集する形のストーリーとなっており、英都大推理研ファンとしてはたまらない構成です。

タイトルにある「双頭」の意味するところも気になるところですね。

感想（ネタバレあり）

究極のフーダニット！

「双頭の悪魔」を読み終えたとき、真っ先に浮かんだのはこの一言でした。ミステリ小説の醍醐味を存分に味わえる本作は、読者に挑戦状を叩きつけてくるような作品です。

一般的にミステリは、

• ホワイダニット：why done it：なぜやったか（動機）
• フーダニット：who done it：だれがやったか（犯人）
• ハウダニット：how done it:どのようにやったか（トリック）

3要素で構成されると言われますが、私個人の見解として、動機やトリックはある意味「どうとでもなる」部分だと思っています。動機は人間の心という曖昧なものに依存しているし、トリックもフィクションの世界では無限の可能性があります。それよりも「誰が犯人なのか」を推理するフーダニットこそが、ミステリの核心だと考えています。

そして、この「双頭の悪魔」はまさに究極の犯人当てゲーム。ここまで巧妙に作り上げられたミステリを読んだのは久々で、「これを見事に当てられる人がいるなら、ただただ感服するしかない」と心底思いました。もちろん、こんな物語を創り上げた有栖川有栖氏にも同じくらいの敬意を抱きます。

物語の舞台は川を挟んで隔絶された2つのエリア。それぞれで殺人事件が起こり、どこかで人物たちがつながっていることは間違いないと分かるのに、その接点すら見つけられないまま物語が進んでいきます。そして、犯人がまったくわからないまま終盤へ。自分の推理力が試されている感覚はひしひしとありましたが、完全に脱帽。犯人像も動機もトリックも、すべてが私の想像を超えていました。

そんな本作を読み終えて、私なりの目標を定めました。それは、次こそ有栖川有栖氏の作品で犯人を当てること。正直、山勘で犯人がわかれば引き分け、根拠をひとつでも提示できれば私の勝利という超ハンデ戦です。自信はありませんが、次作以降に挑戦するモチベーションがぐんと高まりました。

不思議管理に

この先、またひれ伏すことになるかもしれません。それでも、そうやって挑み続けられるのがミステリの魅力。『双頭の悪魔』は、そのことを改めて教えてくれる、まさに傑作でした。

謎と答え（完全ネタバレ）

ここからは今作の謎と答えを備忘のために書いておこうのコーナーです。完全ネタバレ部分ですが、答え部分は伏せておくので、読後に思い返したい場合にクリックしてください。

読者への挑戦①：小野殺しの犯人は誰か。

読者への挑戦②：相原殺しの犯人は誰か。

読者への挑戦③：八木沢殺しの犯人は誰か。