「あなたが誰かを殺した」東野圭吾を読んでの感想(書評001)

ミステリ書評
不思議管理人
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こんにちは、不思議管理人です。現実のミステリーを追うのも楽しいですが、たまには虚構の世界に浸るのもまた一興。ということで今回は、私の趣味の一つであるミステリ小説について、読んだ感想などを綴っていきたいと思います。

本書との出会い

まずは本書との出会いについて。そもそも東野圭吾作品で有名なものは読んでいる感じですが、今回は「○○が○○を殺した」シリーズの最新刊、ということでまぁミステリ好きを名乗るなら必読の一冊ですね。

もちろん、過去の「私が彼を殺した」「どちらかが彼女を殺した」も読んだうえでの今作です。過去作品では犯人が作中では語られないというミステリ界の禁忌を犯したりもしているので、今作も何でもありの展開で心の準備をしつつ読み始めることにしました。

また本作はこの「ミステリがすごい2023」の第3位をとってますので、そのあたりも踏まえて読む前からワクワクMAXなのであります。

あらすじ(軽いネタバレあり)

物語の舞台は高級別荘地。選ばれた人々だけが集う極上の空間で、BBQパーティ後に連続殺人事件が発生します。15人が参加したイベントの後、闇夜に紛れて次々と命が奪われる中、冒頭で事件はあっさり幕を下ろします。さらに驚くべきことに、犯人が自首してくるという展開に!

ところが、自首した犯人は「死刑になりたかった」と主張するだけで、詳細については一切語らず黙秘を続けます。警察が事件の全容を解明できない中、被害者家族たちは真相を追究するため「検証会」を開くことを決意。ここから物語は一気に加速し、衝撃的な真犯人の存在が明らかになるとともに、最後には読者を驚かせる一手が待ち受けています。

感想(ネタバレ含む)

まず何と言っても、その斬新な構成に脱帽。通常のミステリでは事件と推理が同時進行しますが、今作では事件そのものが序盤で片付く大胆な展開。犯人が早々に自首してくるのです。その後、検証会を中心に真相が解き明かされていく構造は新鮮そのものです。

検証会の場では、被害者遺族たちがそれぞれの持つ情報をどこまで明かすべきかで駆け引きを繰り広げ、警察もオブザーバーとして参加。警察側の情報提供を交えながら進む「警察 vs 遺族(with 加賀恭一郎)」の推理合戦が読み応え抜群でした。

特に興味深かったのは、犯人が「死刑になりたい」という動機だけで高級別荘地を選んだわけではないと判明する部分。犯行現場や手口、監視カメラの破壊状況などの伏線が絡み合い、読者も15人の中に共犯者がいるのではないかと疑い始める流れは手に汗握る展開です。

最後のどんでん返し

個人的に最も感動したのは、タイトルの意味がクライマックスで回収されるところ。「あなたが誰かを殺した」という手紙が登場人物の心理を揺さぶる重要なアイテムとなり、最終的にその言葉が現実となる瞬間は圧巻のひと言。これほど巧妙なタイトルの使い方は、さすが東野圭吾さんの真骨頂といえます。

総評

物語全体を通じて緻密に張り巡らされた伏線や、最後の最後で予想を裏切る展開には大満足。「久しぶりにミステリを楽しみませんか?」という帯の言葉にふさわしい、スリリングで濃密な一冊でした。未読の方はぜひ手に取ってみてください!

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