1940年代末、マラッカ海峡を漂う無人の貨物船「オーラン・メダン号」が発見され、その恐ろしい顛末は海事史に残る謎として語り継がれています。この船に何が起こったのか?その船上には死体が転がり、何も語らず漂うばかり。今でもその真相は分からず、数々の憶測が飛び交っています。
SOS信号が告げたもの
物語は1948年初頭に始まります。「オーラン・メダン号」から発せられたSOS信号が、船舶界隈に流れ込みました。その内容は「船員全員が死んだ」「自分も死にそうだ」という、絶望の淵からの叫びでした。現場に急行した船が発見したのは、ただならぬ状況でした。
惨劇の船上
救援に駆けつけたアメリカ船籍の貨物船シルバースター号が目にしたのは、船員全員が息絶えた無人船の姿でした。船員の遺体は、まるで何かに恐怖し固まってしまったかのように、苦悶に満ちた表情で息絶えていました。人間だけでなく、犬までも同様に息絶えていたのです。驚くことに外傷が全く見られなかったといいます。
突然の沈没、船ごと消える謎
「オーラン・メダン号」の船内を調査しようとした矢先、船体から異臭と共に煙が上がり始めました。作業員が退避した瞬間、大爆発を起こした「オーラン・メダン号」は海の底へ沈んでいきました。調査はここで打ち切られ、船が抱える謎もそのまま海中へ消えてしまったのです。
数多くの仮説と謎
この事件を巡り、さまざまな説が唱えられてきました。中でも多いのが、有毒ガス漏れや貨物の爆発などの事故説です。実際、「オーラン・メダン号」が違法な化学物質や毒性ガスを積んでいた可能性もささやかれています。また、一部では貨物に使われる特殊な燃料が船員の呼吸器に影響を与え、急死を招いたのではとも推測されています。
さらにオカルト説も根強く、宇宙人の襲撃や霊的な存在の仕業とする主張も後を絶ちません。海の不思議な謎に、あえて超自然的な存在が関わったとする見方もあります。しかし、実は「オーラン・メダン号」そのものの実在性を疑う声もあります。この船の名前や登録に関する確実な証拠が見つかっていないためです。事件の詳細も後の資料による補完が多く、もしかすると都市伝説として語られるうちにその怪奇さが膨らんでいった可能性もあるのです。
謎の海での消失
「オーラン・メダン号」は実在したのか、それとも話を基に膨らまされた都市伝説なのか。幽霊船の怪奇事件として多くの人々に恐れられ、興味を引き続けてきました。海は古来から数多くの神秘と謎を抱え、今も新たな謎を生み続けています。